【2007.冬】
穏やかな天候の年末年始となりました。世界規模での異常気象を目の当たりにして、今後とも、地球温暖化の影響が心配されます。
日本の家計純資産(金、預金、住宅、土地など)は、2000兆円あるといわれています。これは、アメリカなどの先進国の上をいく、世界一の資産であり、国の資産の80%を占めています。まだまだ「秘めた経済力」があるのだと、今年一年、明るく考えていきたいと思います。
政権が変わり、「美しい国、日本」というキーワードが使われておりますが、現在の美しい国土は、神様が創ったものでなく、多くの先人たちの努力によって造られたものです。江戸時代初期には、徳川家康による「利根川の治水事業」や伊達政宗による「北上川改修」などの基盤整備が行われました。いずれの事業も、物流ネットワークの確保や新田開発といった長期ビジョンにより行われたもので、江戸を名実ともに政治経済の中心として確立させ、伊達62万石を33万石増の実質95万石とするなどの成果を上げました。
現在、財政事情が厳しい中で、事業の取りやめや延期といったことばかりが先行していますが、いったいどういう国、どういった地域にしていくのかという議論が、深められていないのが残念です。歴史に学ぶ私たちは、未来に住む子や孫、更なる子孫が、夢を描ける土台、基礎になる社会資本を造っていかなければならないと考えます。


【2007.春】
暖冬を経過したこの春は、どんな気候になるのかと心配していましたが、若干早めの桜前線とともに、日に日に暖かくなってきました。
朝日新聞に、東北大学との共同企画による「2015年 東北の予感」という特集が掲載されました。大和総研によるものですが、これからの生活向上は、現状維持が精一杯で地域で格差がつくだろうという前提に、生産年齢人口などの見通しから、「東北の魅力的な都市ランキング(2015年の生活水準)」が、試算されていました。その中で、当社のある大崎市は、5位(県内では1位)という上位ランクに位置されておりました。一人あたりの生活水準を地域で生み出される付加価値(所得)を人口で割ったもので表しているということで、働き手の比率が高まるほど生活水準が上がるということです。
高齢化が進みにくく、ものづくりが栄える地域が上位にランキングされているということですが、あくまで比較論であり、5位に位置付けられているからといって、他地域だけの課題と考えられるものではありません。また、65歳以上の高齢者が、人口の4人に1人以上を占める超高齢化社会に直面し、試練の時を迎えるということは避けられないと思います。
それぞれの地域の活力アップには、産業や公共施設を集めるなど、働き手が地域に魅力を感じるように施策を打てるかがカギであろうかと考えます。住まいや医療、教育などの分野で、民間の力を使って生産性を高めれば、人口減少に対応した地域をつくることが可能であることと、それをサポートする建設産業の未来に、明るい希望を持ちたいものです。


【2007.夏】
今年の夏は、猛暑が予想されています。また合わせて、強い台風が多くなりそうな気配もあります。
新潟県中越沖地震が発生し、新潟・長野で大きな被害にみまわれました。道路が波打ち、古い木造住宅は、数百棟単位で倒壊しました。また、ライフラインへの打撃も深刻で、柏崎市を中心に電気・ガス・水道が停止し、JR上越新幹線・北陸自動車道をはじめ、鉄道や道路などの交通網の寸断も相次ぎました。
日本は、改めて災害大国であることを認識させられ、大規模地震や水害・土砂災害などは、全国いたる所に危険性が潜んでいることを痛感させられました。地域を守る防災対策は、待っている余裕などありません。そして、マスコミなどの公共事業不要論が横行している中、基盤整備(公共投資)の必要性は、生活者ひとり一人が、「安全・安心」というキーワードを通して、感じているものと思います。
地域産業が疲弊していると言われていますが、とりわけ建設産業は長期にわたり堪え忍んでいる状況です。 7月12日、参議院議員選挙が公示されましたが、国力を持って国際競争に取り残されないための足腰の強い基盤整備を構築し、そして、地域の安全確保のために、経済活性化のためにも「地域の基幹産業を振興する」施策を打ち出し、実行する候補者に当選してもらいたいものです。


【2007.秋】
この秋は一気に寒さが訪れ、体調の管理が心配されるところです。反面、寒暖の差が激しい年は、美しい紅葉を見られるともいわれています。
建設産業政策研究会により、『建設産業政策2007~大転換期の構造改革~』が発表されました。建設産業に携わっている人で、かつて経験したことのない大転換期を迎えているということを感じていない方はいないと思います。建設投資が急減、あるいは現状の水準で推移するとしても、この産業は「更なる再編・淘汰は不可避」という厳しい現実に直面しています。
国会では、格差社会の議論の中で、都市と地方の違いが取りざたされてきています。これは単純にいうと、都市部は再生を進めたいし、地方は整備を推進したいという違いです。しかしながら、国民の平等な(最低限の)権利からすれば、文化的生活の基本ともいえる下水道普及率が、全国平均約71%に対して東北の平均は約54%という現状や、救急車が移動する上でのアクセスの違いによる救急病院までの時間差は、「生活・命の格差」といっても言い過ぎではないと思います。
公共事業(基盤整備・公共投資)は、まだまだ悪者扱いされている風潮もありますが、必要性を感じている人は少なくありません。公共事業の予算を「安全安心創造費」や「災害予防費」として理解をいただくことが、私たちを含めた産学官、そして、政治家の使命ではないでしょうか。