【2009.冬】
年末は、寒い日が続くこともありましたが、新年は穏やかな正月を迎えることができました。
昨年は、「ゲリラ豪雨」による災害や6月14日の「岩手・宮城内陸地震」の発生への対応と、災害の多い日本を支えてきた地域建設産業の役割を再認識した年でした。
平成21年度の国の公共事業費は、昨年度比マイナス5.2%の6兆3876億円になるようです。資本主義社会が、バランスある発展を遂げるために必要な(将来の姿を考えた)公共事業を減らして経済回復ができるのでしょうか。また、雇用情勢がこれだけ悪化する中、財政出動で仕事をつくることが必要ではないでしょうか。老子の言葉に「上善水の如し」というのがあります。最高の善は、水のようなものである。水は高いところから流れ流れて末端へと広がっていくという意味で、まさに公共事業とは、その役割を担っていると考えます。
100年に一度の未曽有の金融・経済危機といわれていますが、それを現実として経験した人はいないといってよいと思います。
したがって、新たな状況を向かえているといってもよいかもしれません。
建設産業は、すでに厳しい局面を向かえていましたが、これまで達成できなかった改革や成長を目指す人には、チャンスの場を、過去の経験や現状を守りたい人には、トレーニングの場を与えてもらえる年になるのではないかと考えます。
仕事だけでなく地域社会や個人にとっても、絶好の新たな『機会の年』としていきたいものです。
【2009.春】
今年の冬は、雪が少なく市道の除雪作業は一度の出動も無いまま、桜が咲き暖かい春を迎えました。
4月になり、政府・与党は、財政支出15兆4000億円の「経済危機対策」を打ち出しました。中でも公共事業は、「将来の国際競争力の強化につながる事業」ということで、大規模プロジェクトも重点に置かれていますが、今回の国土交通省の公共事業費は、約2兆1000億円であり、成長力強化につながるのか、経済波及効果があるか、不透明な部分もあるといわれています。どこに、どのような効果を求めているのかが、ポイントではないでしょうか。
地方経済の活性化を目指し、自治体には2兆4000億円の交付金が配られます。このうち1兆4000億円は、公共事業の自治体負担分に充て、残りの1兆は各自治体の独自施策に利用するというものです。公共事業は、受益者である地方も一定割合を負担するのがルールであるが地方負担の多くは借金で賄うため「財政悪化に苦しむ自治体」から公共事業を断るケースが出てきています。地方自治体も、地域経済をなんとかしたいという思いはあっても、これでは取り組めないことになります。
2009年度の一般会計総額と新規国債発行額はともに過去最高を更新し、国と地方を合わせた基礎的財政収支の赤字は20兆円超に大きく膨らみます。景気に悪影響を及ぼす長期金利の上昇を抑えるための中長期のシナリオ策定、そして、公共事業を地域からスタートさせるシステムづくりが課題となることでしょう。
【2009.夏】
今年は、梅雨が明けないままお盆を迎えてしまうようです。今年も局地的な大雨による土砂崩れなどの災害が西日本を中心に頻発しおり、私たちの地域でも、いつ災害にみまわれることになるのか心配なところです。
今年度は、政府の相次ぐ経済対策を受けて、公共工事が8年ぶりに増えています。「官に頼る経済」といった論調もありますが、効果として国内総生産(GDP)を押し上げていることは間違いありません。小泉改革の一環で公共投資の縮小が続き、2001年から一貫して前年割れが続いていたため地方の疲弊は拡大していったと考えられます。そんな中、4月の公共工事の進捗状況を示す出来高は、前年同月比11.3%となり、同月の公共事業の請負金額も前年同月に比べ20.5%増となっています。否定的な見方もあるのですが、地方ではこのような経済対策に頼らざるを得ない状況があります。個人投資や設備投資は、まだまだ後ろ向きといわれていますが、現実に動いているGDPの押し上げ効果を民間投資の活性化につなげていく努力が必要だと思います。
8月末には、衆議院の総選挙が行われますが、各政党のマニフェストが出されることと思います。
目先のことも大切かもしれませんが、中長期のビジョンに興味のあるところであります。そして、日本経済を失速させることなく、安全安心な社会の創造を望んでいるのは建設産業界だけではありません。
【2009.秋】
このところ、秋晴れの日が多かったような気がします。しかし、今後は日に日に、寒くなっていくのだろうと思われる時期になってきました。
8月末に、衆議院の総選挙が行われ、政権が交代するという状況が生まれました。また、現在は、宮城県知事選挙の真只中です。国も県も、様々な意味で変革を求められているのは理解できますが、生活の安全安心、そして、安定は、地域の住民が等しく求めていることだと思います。どの産業も同じですが、建設産業も光明を見出すのにはまだ時間が必要かと思われます。
業界紙に、「談合を法制度化せよ」という記事が掲載されました。マスコミ世論による一般的な建設業界に対するイメージは、「建設業界は談合の巣窟であり、官民グルになって甘い汁を吸い続けてきた。」といったものだと思います。しかし、冷静に考えてみれば、問題を生み出す談合そのものを無くしてしまうべきという考えは飛躍した論理ではないかとも思います。談合があるからこそ、今風でいうところのワークシェアリングが可能となり、大小さまざまな建設業者が生き残れるのではないでしょうか。そして、それを通じて、雇用の安定化がもたらされ、地域経済の安定と発展が担保されるものと思います。さらには、安定的な技術の伝承にもつながるものと思います。また、地域的な事情を勘案した合理的な建設事業の推進が可能となるためのシステムとも考えられます
そもそも、談合とは話し合うことであり、「話し合い」は、様々な社会問題を乗り越えて解決するために、人間に与えられたツールのひとつだと思います。改善を目的に、「望ましい談合のかたち」を指し示すような新たな法制度があればと考えます。