【2019.冬】
 昨年暮れには若干積雪がありましたが、穏やかな新年を迎えることができました。今年の干支は、「己亥(つちのとい)」ということです。エネルギーに満ち溢れた時期であることを示す「己」と安定した準備期間に向いている「亥」という意味があるそうですが、これまでの常識や慣習にとらわれず斬新な発想で果敢に挑戦する「猪突猛進」に期待したいと思います。 昨年は、2月上旬に日本海側で記録的な豪雪となり、夏場には大阪・北海道での地震、西日本での豪雨災害があり、気象庁が臨時会見を開くほどの災害級の暑さなどもあり、天災が相次いだ年でした。さすがに経済活動にマイナス要因として働きましたが、下ぶれはいずれも一時的なものであり、回復基調が持続し「いざなみ景気」の73か月に、景気拡大期間が並びました。今年は「平成」が終わり、5月から始まる新たな元号のもと内需のけん引力を背景に、消費増税後も景気の腰折れは回避できるのではないかと思います。 正月と言えば箱根駅伝ということになりますが、テレビで観戦していると気になるコマーシャルが流れてきました。サッポロビールの「大人エレベーター」シリーズです。俳優の妻夫木聡とメジャーリーガーの田中将大との対談形式で進みますが、数パターンありそれぞれに深い話と感心させられました。妻夫木さんが、「運は必要ですか」と問いかけると間髪入れず「必要です」と答える田中選手。「自分自身が前向きにやるべきことをやっていれば、運が向かってくる。飛び込んでくる。」というメッセージが続きました。まさに「私たちの仕事・生活」に当てはまる言葉と感じました。 長期的に見ても、本格的な人口減少が進んでいく中での経済成長の実現を目指し、生産性向上や体質強化を、やれることから取り組んでいかなければなりません。

【2019.夏】
また、更新が遅れてしまいました。ここ数年は、異常気象が続き、洪水、台風、熱波などが、人々の暮らしを脅かしています。台風15号では、千葉県を中心に関東に大きな被害をもたらしました。 東日本大震災を経験している私たちでも、台風被害の状況を知ることで、改めて対策の必要性を痛感しています。窓や開口部は、補強を含め点検する。排水溝や側溝は、水はけを保つようにする。庭木や塀なども含め、飛散防止に努めるなどの外部の対策や、飛散防止フィルムなどの防護やガーテンやブラインドの確認、停電時の準備や避難用グッズ・水・食料などを用意するなどの内部的な対応をしていかなければなりません。 いずれにしても、雨や風が強くなってからの作業は危険であり、最新情報を確認し、早めの対策を行うことが急務です。また、近所の避難場所や避難経路、そして、市町村が作成しているハザードマップで危険個所を確認しておくことも必要です。 小豆島のヤマロク醤油は、稀少の、木桶を使った天然醸造の醤油屋として醤油通の間での有名店です。その5代目の山本康夫社長さんは、「自分たちは百年後の人たちの為に、醤油の木桶を作っておく」と、5年10年単位ではなく、‘代’(孫子の代まで…)につながる生き方を教えてくれています。山本さんが新しい桶を発注した際、残り一社となった桶屋の職人さんから、「後継者がいないので、自分の樽は自分で直せるようにしておけ」と言われたそうです。そこで、「木桶職人復活プロジェクト」を立ち上げ、仲間と桶屋さんに弟子入りすることで、2年をかけてようやく自分たちの手による新桶を完成させたということです。 山本さんの取り組みや生き方を知り、考える時間の単位(サイズ)で、行動が違ってくるのだと実感しました。‘代’という、長い時の流れをイメージした時は、過去を生きた人たちの心の奥底から湧きあがる、突き動かされるような衝動が、今を創っているのではないでしょうか。 過去からの人々の思いに触れ、心に熱く響くものを受け取りました。

【2019.秋】
 猛暑と災害の夏が過ぎ、やっと秋らしい日が続いています。来年のオリンピックを見据えての酷暑対策や急な悪天候への課題といっそうの対策が必要と言われています。というような書き出しで今回は始めようと思っていましたが、その後、台風19号・21号と低気圧による記録的な大雨で、各地で河川の氾濫や土砂崩れが相次ぎました。特に、5県27河川での浸水被害は当地域でも発生し、現状を目の当たりしています。この災害で亡くなられた多くの方々のご冥福をお祈り申し上げます。また、被災された皆様、そのご家族の方々に対しまして、心よりお見舞い申し上げます。 今回の災害では、想定以上の雨に自治体が対応しきれなかったケース、や住民が非難の呼び掛けに応じなかった例もありました。冠水のスピードにより、避難準備や避難指示をする呼び掛けのタイミングが難しく、さらには、自主避難が困難な住民の方もおり、不幸な事例が多々ありました。台風19号の上陸から2週間が過ぎましたが、住宅の全半壊は3400棟を超え、浸水は7万棟近くに上り、避難所で生活をしている方々は6000人を超えているようです。被災された方々は疲れ切っていることと思いますが、一刻も早く平常の生活を送ることができるよう建設産業に携わる者としてできうる限りの協力をしていきたいと思います。 東日本大震災から8年半が経過しましたが、映画『サンマとカタール~女川つながる人々~』の中で、「難しいだけで不可能ではないと伝えたかった」という言葉がありました。復興に立ち上がる宮城県女川町の人々を追った映画なのですが、冷凍冷蔵施設建設にあたり、「工期も人手も資材の調達も全て無理のある中で、それでもやり抜く」と突き進んだ方が言った言葉です。当時、町民みんなが下を向いている時、何とか顔を上げて貰うためにもそれをやり遂げたということは、「頭で計算したものに従い立ち止まる」のか、「自分の内側から湧いてくる‘何か’に従い突き進む」のかといった思いの違いではないかと思います。生きていれば誰もが様々な困難にぶつかりますが、そんな時、自分の内側から湧いてくる「何か」に集中し、それを大切にしていこうということだと考えます。